サルバドール・ダリに「茹でた隠元豆のある柔らかい構造」という、美術の教科書に必ず出てくる不気味な絵があるが、その副題が「内乱の予感」である。最近のタイ王国のニュースを聞くと、なぜかこの絵のタイトルを思い出す。
前国王の死去後、タイ王国はある種の不気味な緊張感に包まれているような印象がある。相変わらす王権批判はご法度で、各種報道によれば締め付けは前より一層厳しくなっているが、その背後には前国王時代とはまたちょっと違った側面もあるようだ。それは現国王と軍部の間の潜在的な対立である。ここら辺の事情はアンドリュ-・マーシャルの『危機の王国』(2014) という洋書に詳しいが、これはタイでは発禁処分になっている。残念ながらまだ日本では翻訳がないが、これを読むと現国王にかかわる多くの問題や、さらに現在亡命中のタクシン元首相と現国王とのつながりとかが詳細に記されている。最近、『選択』という会員制の雑誌にも、この現国王派と軍の間の緊張関係の記事が載っていたが、現国王も周囲に親衛隊を配しており、実際に対立が起これば、軍事衝突も避けられない可能性もあるという。王国というのも、政治的制度の一つであるが、永遠に続く政治制度などありえない。アセアンの隣国のようにタイにも共和制の時代が訪れるのだろうか。
ちなみに、先日東京都写真美術館で開催されたアピチャッポン展の入り口のところに、彼の愛読書のいくつかが並んでいたが、ロシア映画史や、レイ・ブラッドレイの火星年代記(確か)に並んで、このマーシャルの発禁本が堂々と並べられていたのには思わず苦笑した。それをちよっと触ると、館員にうるさく注意された。権威主義体制はどこにでも繁茂するのである。
前国王の死去後、タイ王国はある種の不気味な緊張感に包まれているような印象がある。相変わらす王権批判はご法度で、各種報道によれば締め付けは前より一層厳しくなっているが、その背後には前国王時代とはまたちょっと違った側面もあるようだ。それは現国王と軍部の間の潜在的な対立である。ここら辺の事情はアンドリュ-・マーシャルの『危機の王国』(2014) という洋書に詳しいが、これはタイでは発禁処分になっている。残念ながらまだ日本では翻訳がないが、これを読むと現国王にかかわる多くの問題や、さらに現在亡命中のタクシン元首相と現国王とのつながりとかが詳細に記されている。最近、『選択』という会員制の雑誌にも、この現国王派と軍の間の緊張関係の記事が載っていたが、現国王も周囲に親衛隊を配しており、実際に対立が起これば、軍事衝突も避けられない可能性もあるという。王国というのも、政治的制度の一つであるが、永遠に続く政治制度などありえない。アセアンの隣国のようにタイにも共和制の時代が訪れるのだろうか。
ちなみに、先日東京都写真美術館で開催されたアピチャッポン展の入り口のところに、彼の愛読書のいくつかが並んでいたが、ロシア映画史や、レイ・ブラッドレイの火星年代記(確か)に並んで、このマーシャルの発禁本が堂々と並べられていたのには思わず苦笑した。それをちよっと触ると、館員にうるさく注意された。権威主義体制はどこにでも繁茂するのである。