この作品についての一般の感想は、かなりの部分後半の実験的スタイルに圧倒されたものだろうと想像するが、前半部分もまた、アピチャポン作品らしい特徴と、斬新さがいろいろ混じっており、ある意味彼の今までの作品の総集編みたいな雰囲気もある。実際彼の歴代の作品はどこかミニマル音楽でいうところのフェイズシフトのような特徴もあって、繰り返しつつすこしずつ変化するというか、なんとなく見たことのあるシーンが、それなりに進化を遂げる、という風情もある。
船が颯爽と航行するシーンが特に印象的だったが、これを見ていて、ブリスフリー・ユアーズの一シーンを思い出した。主人公が車で椰子の木がしげる村から、広々とした国道に抜けていくシーンなのだが、後部座席にカメラを置いて道中を映していて、鬱蒼とした村の中から、国道に抜けていくときのなんともいえぬ爽快感は、東南アジア村落で似たような経験をしたものなら、なるほどという感じがする。あまり劇中で音楽をならさないアピチャポン映画だが、このシーンでは珍しく、音楽をがんがん鳴らしていて、それが現代音楽のミュージックヴィデオのように見えるのも新鮮であった。
また導入に出てくる、一連のスナップショット(これもナレーション付となしで、反復される)も、ちょっといわくありげで面白い。なぜが観音像がでてくるが、観音は大乗仏教であって、タイの上座仏教にはいない。たぶんこれは彼の好きな、バンコク郊外のワイロンプア寺(地獄寺?)を連想しているのかもしれない。それに続くのは、1959年から63年まで首相を務めた、軍人のサリット像であり、その独裁的なスタイルは現状のタイ軍事政権を彷彿とさせる。なるほど、サリットね、と思わずニヤっとしたが、隣に座っていたうるさいフランス人観光客がどう思ったかは知らない。
船が颯爽と航行するシーンが特に印象的だったが、これを見ていて、ブリスフリー・ユアーズの一シーンを思い出した。主人公が車で椰子の木がしげる村から、広々とした国道に抜けていくシーンなのだが、後部座席にカメラを置いて道中を映していて、鬱蒼とした村の中から、国道に抜けていくときのなんともいえぬ爽快感は、東南アジア村落で似たような経験をしたものなら、なるほどという感じがする。あまり劇中で音楽をならさないアピチャポン映画だが、このシーンでは珍しく、音楽をがんがん鳴らしていて、それが現代音楽のミュージックヴィデオのように見えるのも新鮮であった。
また導入に出てくる、一連のスナップショット(これもナレーション付となしで、反復される)も、ちょっといわくありげで面白い。なぜが観音像がでてくるが、観音は大乗仏教であって、タイの上座仏教にはいない。たぶんこれは彼の好きな、バンコク郊外のワイロンプア寺(地獄寺?)を連想しているのかもしれない。それに続くのは、1959年から63年まで首相を務めた、軍人のサリット像であり、その独裁的なスタイルは現状のタイ軍事政権を彷彿とさせる。なるほど、サリットね、と思わずニヤっとしたが、隣に座っていたうるさいフランス人観光客がどう思ったかは知らない。